Submitted by Ryohei Kataoka, Citizens' Nuclear Information Center(CNIC) Commenting on behalf of the organisation
原子力資料情報室 パブリックコメント(Japanese)
■ドラフト全体について
(1) ICRPが勧告する一般人の年間被ばく限度は1mSvであり、たとえ、現存被ばく状況においてもこれを堅持するべきである。事故被害を受ける住民には何の責任もないことを考えると、1mSv/年以上の被ばくが想定される地域では生活を継続しないことを原則とし、政府や事業者はこれを保障するように勧告するべきだ。その上で、現存被ばく状況でもそのリスクを承知の上で、生活を続けたい人に対しては、一定程度の被ばく緩和を勧告することは許されることである。日本政府は避難指示解除後にも避難を続けたい人に対する住宅支援を打ち切り、事実上、帰還を強要している。この結果、自死なども起きている。これを容認するような勧告であってはならない。(2) 複数の重要なタスクグループ(TG79:実効線量の再検討、TG91:低線量・率被ばく影響の評価、TG102:Detrimentの計算方法、TG114:Reasonableness and Tolerability)が進行中にもかかわらず、なぜいま大規模原子力事故に特化した109と111の改定案を出す必要があるのか。進行中のタスクグループの議論の結果を待ってから、アップデートをすべきではないか。(3) ICRPのこれまでの勧告によって、日本政府が福島原発事故にどのように対処したか、住民を被ばくから守ったのかという検証をおこない、その結果を新たなドラフトに反映させるべきだ。(4) 福島原発事故直後の避難(情報が共有されず、汚染が高い方角へ避難したこと)や、安定ヨウ素剤の配布・投与(ほとんどできなかった)など、放射線防護の適切性について検証をおこない、ドラフトに反映させるべきだ。(5) 空間線量率だけでは面的な汚染の把握しかできない。放射性物質放出による環境汚染では、ガンマ線だけでは把握できない核種もあるので、放射性物質の濃度(Bq)でも規制する必要がある。(6) 放射線による低線量被ばく、健康影響、経済的影響、動植物への影響の学術論文の引用に偏りがある。最近の研究では、100mSv以下の低線量被ばくでも有意なリスク増加が報告されている。最新の疫学研究の知見を踏まえるべきである。例えば以下のような論文も考慮すべきだ。・国際コホート研究:放射線量モニタリングを受けた労働者の電離放射線と白血病およびリンパ腫による死亡リスク(INWORKS) Klervi Leuraud et al.(2015)Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study. Lancet Haematol, vol.2, e276-281. ・職業上の電離放射線被ばくによるがんリスク:仏・英・米労働者の後ろ向きコホート研究(INWORKS) David B. Richardson et al.(2015)Risk of cancer from occupational exposure to ionising radiation: retrospective cohort study of workers in France, the United Kingdom, and the United States (INWORKS). British Medical Journal, 351: h5359, 1-8. ・1980〜2006年のイギリスにおける自然放射線と小児白血病および小児がん発生率に関する記録に基づく症例対照研究 Gerald M. Kendall et al.(2013)A record-based case-control study of natural background radiation and the incidence of childhood leukaemia and other cancers in Great Britain during 1980-2006. Leukemia, 27, 3-9.(7) 「長期的な目標は年間1mSv程度まで被ばくを低減することである」としているが、目標達成に長い期間がかかった場合、積算線量が100mSvを超えることになり、健康影響に影響をおよぼす恐れがある。参考レベルは期間との組み合わせで示すべきだ。(8) パラグラフ(224)・(225)、「正当化と最適化の原則に従って放射線被ばくを合理的に達成可能な限り低く維持し減少させたいという願い」というが、reasonably achievableというと、事故が大きくなればなるほど基準が緩和されてしまうのではないか。正当化と最適化を考慮する場合に、社会的要因ならびに心理的要因を加えるべきではない。(9) ICRP TG93の座長・甲斐倫明氏(放射線審議会委員)、副座長・本間俊充氏(原子力規制庁職員)は、ICRPが勧告する対象である「当局」の有識者、職員である。勧告を出す側と、勧告を受ける側が同じ人であり、利益相反になるのではないか。ICRPがいう独立性に抵触するのではないか。
(1)これまでの1〜20mSv を「10mSv を超える必要は一般的にはない」と変更しているが、速やかに1mSv以下にすると勧告すべき。 ICRPは20歳の成人を基準に追加被ばく線量を設定しているが、BEIR�擦任郎任盍脅�性が高い0歳の女児に対するリスクを考慮すると、年間の追加被ばく線量は0.013mSv未満で管理すべきとしている。また、ECRRは年間の追加被ばく線量は0.1mSv以下で管理すべきと勧告している。(2)「10mSvを超える必要は一般的にはない」という書き方は、参考レベルを10mSvに変更するように解釈できるため、参考レベルの変更なのかそうでないのか明示すべき。(3)「the order of 1mSv per year」(1ミリシーベルト程度)という書き方では、1〜9mSvまでという解釈ができる。二通りの解釈が可能となる表現は避けるべきだ。ここでは、「Lower than 1mSv」を用いるべき。
■本文について
(1)パラグラフ(22)にLNTモデルを明記すべき。ICRP Publ.103のパラグラフ36には明記されている。混乱を避けるためにも、ICRPの防護体系ではLNTモデルを前提としていることを明示すべきである。(2)パラグラフ(41)では、二次的な健康問題として糖尿病、循環器疾患、高脂血症、高血圧などの疾患が挙げられているが、「被災集団の曝露レベルを考慮すると、これらの障害は、放射線による直接的な健康影響とは考えられず、事故による生活様式の変化と関連している」との断定はできないだろう。これでは生活様式の変化がなければそうした疾病が避けられるかのように読めるが、被ばくが健康影響を及ぼすこともあれば、生活様式の変化をもたらすこともある。(3)パラグラフ(124)、「避難が適切に計画されていないと、病院や老人ホームの患者や高齢者など特定の集団にとって避難が不適切となる可能性がある(Tanigawa,2012)」との記述について、大規模事故時において、実効性ある適切な避難が可能だとは考えられない。適切な避難計画があってもなお不適切な避難となる場合があることを明記しておくべきだ。(4)パラグラフ(201)、「長期の甲状腺健康調査プログラムは、胎児期あるいは小児期または青年期に甲状腺への吸収線量が100〜500mGyの被ばくをした個人に対してのみ実施されるべきである。」との記述について、そもそも吸収線量100〜500mGyは計測できるのか。福島原発事故の際は、計測などできなかった。 また、甲状腺健康調査が吸収線量100〜500mGyのみでいいとしているが、100mGy以下でもがんの影響は見られている(例えば以下の論文)。従って、この節は削除するべきだ。 ・Yamamoto et al.(2019) Association between the detection rate of thyroid cancer and the external radiation dose-rate after the nuclear power plant accidents in Fukushima, Japan. Medicine (Baltimore), 98(37) e17165.(5)パラグラフ(205)、汚染状況下で住まないことを選択する人に対する支援の必要性を明記するするべきだ。現在、日本政府がおこなっている施策は、住宅支援の打ち切りなど、自主避難者に対して厳しい姿勢であり、それによって自死などが多数起きている。
■ANNEX A. チェルノブイリについて
(1)チェルノブイリ法についての内容を紹介するべきだ。(2)A.3.5.1 移転について、 事故後5年目に制定されたチェルノブイリ法では、被ばく線量が5mSv/年以上となる地域では強制移転の区域とし、1mSv/年以上の地域では移住の権利を認めている点を明記しておくべきだ。福島では、そのようなチェルノブイリの経験を踏まえた対応は取られなかった。こうした点も記述しておくべきだ。(3)チェルノブイリ25年レポート「“Twenty-five Years after Chernobyl Accident: Safety for the Future”. 2011 National Report of Ukraine」など、最新のレポートを反映したものにすべきだ。
■ANNEX B. 福島について
(1)B.1 はじめにについて、東京電力の責任を明示すべき。原発事故にともなう放射性物質を排出した責任企業である東京電力が、事故の責任を十分に認めていない。賠償の打ち切りなど不誠実な対応しかしていないことについて、記述があるべきだ。(2)パラグラフ(B29)、避難指示の解除要件のうち「(�鵝房�治体と住民の間で十分協議が行われたことの確認」とあるが、政府・自治体の説明会に参加したほぼ全ての住民から反対があっても、避難指示解除は強行された(例えば、南相馬市小高区、浪江町、富岡町など)。住民の意思は反映されなかったことを記述すべきだ。(3)パラグラフ(B37)福島におけるICRPダイアログの取り組みとして、「福島のエートス」とともに実施してきた「福島ダイアログ」や「ICRPダイアログ」では、福島に残って生きていく人の声しか聞いたことにならない。多様な被災者・避難者の声を聞いて記述すべきだ。(4)パラグラフ(B42)、福島での甲状腺がんについて、1巡目と2巡目の検査の結果、「放射線被ばくの影響である可能性は低い」と書かれているのは間違いである。根拠となる論文には、1巡目の結果しか出ていない。最新の検査結果を基に判断すべきだ。(5)B.4.6について、福島原発事故後に、新生児の複雑心奇形が全国的に優位に増加した論文内容を引用すべきだ。 ・福島原発事故後の複雑心奇形の全国的増加 Kaori Murase et al.(2019) Nationwide increase in complex congenital heart diseases after the Fukushima nuclear accident. Journal of the American Heart Association, 19;8(6):e009486. Comment