改定案は、東電福島第一原発事故を踏まえたものということである。しかし、事故後の日本の対応は原稿のICRP勧告に沿っていないことをまず指摘しておきたい。現行では、「年1〜20mSvの下方から参考レベルを選び、それを順次下げていく」とされている。これは、年10mSv以下から参考レベルを選び、順次下げていくという意味だ。しかし、福島事故では、年20mSvを避難の基準とし、復旧過程で最も高い線量基準の年20mSvを下回れば避難解除、支援打ち切りを強行して帰還を迫っている。日本政府は、事故後8年半を超えた今も原子力緊急事態宣言を解除していない。初期被ばくは見過ごされ、土壌汚染や広範囲に広がった汚染がきちんと測定されないまま、避難指示区域外で体調不良、あるいは不安を抱えた住民が何の補償もないまま個々自力避難をせざるを得ない状況が広がった。被害住民は日本政府の決定に対し、意見を求められる場はなかった。全国で1万3000人もの人々が適正な補償を求め、国と東電を相手に裁判で訴えている。ICRPはこのような事態を生んだ日本政府の対応に対し、注意喚起するべきである。
改定案は、福島の現状に追随するように緊急時は年100mSv以下、 復旧過程では「年1mSvのオーダー」「10mSvを超える必要がないであろう」としている。しかし、被ばく線量は累積被ばくを考慮するべきで、生涯被ばく線量100mSv以下、年間被ばく線量は1mSv未満を厳守するべきである。
また、屋内退避について「可能であれば放射性ヨウ素による甲状腺のブロックと併せて行うべき」としている。しかし、原子力規制庁による避難計画では安定ヨウ素剤の事前配布は緊急時直ちに避難するPAZ(5�匏�)に限られ、緊急時屋内退避を求められるUPZ(原発5〜30�匏�)には安定ヨウ素剤は事前配布されてない。UPZにおける安定ヨウ素剤の事前配布の必要性をもっとはっきり述べてほしい。
付け加えるなら、福島県で台風19号による死者が非常に多かったのは、原発事故によるコニュニティーの崩壊も一つの要因ではなかったのか、大量の雨は大量の放射性物質を土砂とともに下流へ、海へ押し流してはいないか、土壌汚染、水質汚染も含め多角的に検証してほしい。東日本大震災による福島第一原発事故で明らかなように、地震・津波・噴火・台風など自然災害の多発する日本では、そもそも原発運転はすべきではないという結論が出るのではないか。