日本国内では一般公衆の年間被ばく限度は1mSvと定められているにもかかわらず、福島原発事故によって放出された放射性物質による被ばく限度は年間20mSvとされています。これは、国際基準では緊急時の被ばく限度としては最小値とのことですが、事故後8年余りが経過しても、日本政府は居住制限区域等の制限を解除し、さらに帰還困難区域の一部地域でも居住を再開するために緊急時の基準のまま年間20mSvを目安としています。
福島原発事故以前から、原子力施設や放射性物質を取り扱う施設では放射線管理区域が設定され、そこで働く労働者には被ばく線量管理や被ばくにかかわる健康診断が義務付けられています。放射線管理区域に相当する放射性セシウムで汚染された農地で働く農業従事者が、日本政府に対して原子力施設で働く労働者と同様な被ばく線量管理と健康診断を実施するように要求し続けていますが実現していません。
日本政府は来年の東京オリンピックの聖火リレーの出発点を福島原発事故の現地対応拠点であったJビレッジと決め、福島県内でもソフトボールの予選を行うなど、福島県内は原発事故から復興したことを世界中にアピールしようとしています。
しかし、福島県内はもちろん、東京首都圏を含めて、福島原発事故によって放出された放射性物質、特にセシウム137(半減期30年)は、放出された量がほとんどそのまま環境中に残留しています。放射線管理区域の基準40000Bq/�屬鯆兇┐訃貊蠅�広く分布していると思われますが、日本政府は放射性物質の測定に基づく正確な地図を作成していません。
放射線防護の原則に基づくならば、原発事故による追加の被ばく線量をできる限り低減するために必要な政策を実施すべきですが、日本政府は年間20mSvの被ばく線量ならば健康影響がないと広報して、被ばく線量を低減するために必要な対策をほとんど実施していません。
年間1mSvを超えるような被ばくは許容できないと自らの判断で避難した住民に対して、2017年3月まで無償で住宅が提供されていましたが、その後、無償提供は打ち切られました。
群馬県内に避難した住民が日本政府と東京電力に対して損害賠償請求を行っている訴訟において、日本政府は2019年9月17日、東京高等裁判所において、年間20mSvを超えない地域から自主的に避難した住民に対して、損害賠償を行わない理由を次のように主張しました。
「平成24年(2012年)1月以降の避難の相当性を肯定し、損害の発生を認めることは、自主的避難等対象区域は年間20mSvを超えない区域であり、放射線による健康被害が懸念されるレベルのものではないにもかかわらず、平成24年(2012年)1月以降の時期において居住に適さない危険な区域であるというに等しく、自主的避難等対象区域に居住する住民の心情を害し、ひいては我が国の国土に対する不当な評価となるものであって、容認できない。」
しかし、福島原発事故によって福島県内はもちろん東日本の広範囲が放射性物質によって汚染されたことは科学的事実であり、2012年1月の時点では2011年3月からの減衰はわずか(セシウム134の半減期は2年)で、セシウム137による汚染は2019年においても継続しています。
日本政府は避難指示対象区域からの避難者はもちろん、自主的避難等対象区域に居住するすべての住民に対しても、原発事故由来の放射性物質により被ばくのリスクが増加したことを説明し、リスクをできる限り避けるための対策や被ばく管理、健康診断などの制度を整備しなければなりません。被ばくのリスクを避けるために避難の継続や新たな避難・転居を希望する住民に対しては、その選択を支援する制度を整備すべきです。現在の日本政府の政策では避難を継続したいと考えても生活の基盤である住宅を奪われ、新たに確保することはきわめて困難です。
日本政府の誤った政策により、原発事故被害者である日本国民が不要な追加被ばくのリスクにさらされ続けていることをふまえて、すべての住民が将来にわたって健康に快適に生活することができる環境を保障することができる制度・基準を提言してください。